S 8-8 「マリヤの賛歌 [Magnificato]」(1999)
S 11-6 「シメオンの賛歌 [Nunc Dimittis]」(1999)
S 16-3 「特祷〜アーメン」(2006)
S 23-2 「栄光の歌[Doxologia]」(2006)
S 25-9 「キリエ [Kyrie]」(2006)
S 27-4 「大栄光の歌 [Gloria]」(2006)
S 32-4 「感謝聖別・叙唱」(2006)
S 33-2 「聖なるかな [Sanctus - Benedictus]」(2006)
S 34-6 「記念唱」(2006)
S 37-3 「主の祈り [Pater Noster]」(2005)
S 38-4 「神の小羊 [Agnus Dei]」(1998〜2006)
S 59  「詩編第106編」(2006)

 

 結論から先に申しますと、私の書いた詠唱(チャント)は殆どが前後の関連性を考慮に入れずに、独立した讃美の歌と同様に書いており、故に自分では「モジュラー・ミサ曲」と呼んでいます。

 

 1999年、Elpisの公演「AVACO賞受賞記念・新しい賛美の歌コンサート」に向けての、小さなコンサート・ピースとして書いた「シメオンの賛歌」を痛く気に入って下さった聖歌集改訂委員会から、2005年にミサ用の詠唱を聖歌のように歌える“歌モノ”として書いてみないか?との依頼を受けた際、冗談ではなく“RAP”(ラップ・・・チッチキチッチッチー)で行こうと、真剣に思っていました。1990年に文語体から口語体になった現在の祈祷書は、文章が正に喋り言葉に接近し、“詩”のように韻を踏むかのようなリズム感が失われました。ですからいっそのこと、普通の喋り言葉で、尚且つ物凄く多い文言でも4/4拍子×32小節にピッチリ収められるRAPが最も適当だろう・・・なんて。

 

 しかしRAPは飽くまでソロ・ボーカルなので、全てを大勢でRAPするには向いてない・・・ふむ、「古今聖歌集」を見直してみれば、やっぱりアングリカン・チャントは素晴らしい!グレゴリオ聖歌のマリア・ミサもいい!・・・等と思っていたら、どうも改訂委員会もずっと以前から従来のミサ曲に対し、新しい祈祷書のテキストを当てはめるのに四苦八苦したとか。だからこそ1995年に「古今聖歌集増補版'95」が出版された折り、新しいミサ曲が数多く収められた。それが10数年を経て日本各地の聖公会の教会で使われ、ようやく馴染んできた・・・ならば今更、新しいのを作らなくてもなぁ〜・・・とも思いました。

 

 しかし改訂委員会としては、新しい聖歌集には詠唱のヴァリエーションを豊富に揃え、例えば聖餐式(ミサ)の場合、各教会がキリエ、グロリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュス・ディ等を(各々の教会で形成する礼拝に合わせて)個別に選び、教会独自の「コンピレーション・ミサ曲」を組み立てるように推奨したいとの明確なコンセプトを持っていました。そのコンセプトに沿って、重くなく軽くなく、「詠唱=聖歌=讃美」の本質に立ち返ってメロディアスな詠唱が欲しい、とのご要望。

 

 結果として、ミサの中では歌うのが困難なパート・・・例えば「クレド(ニケヤ信教)」等はハズして、“讃美”に相当する部分(唱えるのではなく歌うべき箇所)だけを集中して作ろう、と相成りました。そして結果的に、コンセプトに沿って全ての楽曲がコンピレーション・ミサの“モジュール”として機能する事を目的とした「モジュラー・ミサ曲」を作るに至りました。私のミサ曲には全体を通じての論理的・音楽的な統一性(一部を除いて)ありません。他の詠唱もほとんどが同様です。

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